円債も米債も膠着状態
日本経済については、財政緊縮の進む欧米や金融引き締めが続く新興国とは異なり復興需要のサポートがあるとはいうものの、外需鈍化の影響は避けられない。第3次補正予算が遅れ気味であることもあわせて考えれば、1~3月の途中までは景気にネガティブな材料が多そうである。そういった国内景気状況も踏まえると、円債金利も今後数カ月間はまだ現状の10年1%近辺から大きく乖離することはないと思われる。
なお、仮に欧米の長期金利が、景気に対する悲観的な見方とともにもう一段の低下圧力を受けてきた場合には、円債金利の感応度は夏場に比べれば若干上昇してくる可能性があるだろう。夏場に円債金利の海外金利低下に対する感応度が低下しだのは、一つには、復興需要があって財政政策の方向性が海外と異なっているためであろう。ただし、もう一つ大きかったのは、円債の投資家が米債の投資家ほどポジションをショートに傾けていなかったことである。米債市場では、財政問題への懸念と過剰な金融緩和がいずれ長期金利の上昇およびイールドカーブのステイープ化(右上がり)をもたらすとの見方が多く、7月以前には空売りあるいはインデックス対比でのショートのポジションが多かったと見られる。その巻き戻しの圧力が7月以降の長期金利急低下をもたらした面が大きい。
翻って日本では、2010年度までに銀行などが積極的に債券購入を進めていたこともあり、中長期的なショート・ポジションの累積は見られていなかった。そのため、ショートカバーによる金利急低下も生じなかったと考えられる。しかし、米債市場においても、夏場の金利急低下によってショート・ポジションの圧縮が進んだと見られる。今後、米債市場において仮に金利低下がもう一段進む場面があるとすれば、ロング・ポジションの積み増しとなるはずである。その意味で、円債投資家も条件は変らない。米債10年金利か2%近辺に定着するようであれば、円債10年金利も1%程度での膠着状況が続きそうだが、もし米債が2%割れでの水準で定着していくことがあれば、円債金利も0.8%台までの低下が生じてもおかしくはない。